髪と皮脂は密接な関係があるのですが、その皮脂自体がいったい何なのか、私たちは意外と知りません。

「毛穴から分泌される脂」ということは分かっています。ですが「脂(あぶら)」といってもいろいろあります。例えばサラダ油やオリーブ油。バターやマーガリンなどもそうです。

では、皮脂とはいったい、どんなものなのでしょうか?今回はそんな皮脂の成分についてにお話です。

皮脂を分泌する仕組み

その前に、皮脂が分泌する仕組みについて少しだけ触れておきたいと思います。なぜなら、この分泌方法が皮脂の成分に少し関係しているからです。

皮脂は皮脂腺(または脂腺)で作られます。

皮脂腺は全ての毛穴に存在していて1、特に顔(いわゆるTゾーン)や胸などで皮脂腺はよく発達しています。次いで頭皮などの皮脂腺が発達していますが、面積に対する密集度に関しては、頭皮のほうが密集しています。

その皮脂腺の内部では、脂腺細胞という細胞内で皮脂が作られ、細胞内に充満していきます。

そして、皮脂でいっぱいに満たされた脂腺細胞は、細胞が破裂することで細胞内の皮脂を分泌します。これは「全分泌」と呼ばれています。

皮脂の成分

皮脂は厳密に分けると皮脂腺から分泌された皮脂に表皮脂質という脂質が混ざっています。

表皮脂質は、垢(アカ)や頭垢(フケ)などといった新陳代謝によってはがれる細胞と一緒に出てくる脂質などの成分、つまり細胞がもともと持っている脂質成分です。

「混ざっている」といっても皮膚上の皮脂の膜(皮脂膜)において、表皮皮脂が占める割合はごくごく少量で、大部分(90%以上)の成分が皮脂腺から分泌される皮脂です。

このように、私たちが皮脂と呼んでいる油脂は正確には“皮脂”ではないのですが、一般的な呼び方にしたがい当サイトでも「皮脂」と呼んでいます。

皮脂腺からでたばかりの皮脂の成分は主にワックスエステルスクアレントリグリセリドというものだそうです。だいたいは次のような割合になっています。

名前割合
トリグリセリド約60%
ワックスエステル約25%
スクアレン約12%
その他約3%

その他に入る成分はコレステロールエステルやコレステロールなど皮脂腺から排出されたさまざまなものです。これらは細胞膜にふくまれる成分で、皮脂が分泌される時に細胞膜を破裂することで皮脂内に混ざっています。

これに対して表皮脂質は、細胞間にある脂質(細胞間脂質)や天然保湿因子(NMF)などがふくまれています。

これら二つが混ざり、さらに皮脂の成分の一部を、皮膚や毛穴に生息する常在菌によって分解されたものが、私たちが「皮脂」と呼んでいるものです。

この完成された皮脂の成分を簡単に表すと、次の表のようになります。

名前割合
トリグリセリド約25%
ジグリセリド
モノグリセリド
約10%
遊離脂肪酸約25%
ワックスエステル約22%
スクアレン約10%
コレステロール
コレステロールエステル
約4%
その他約4%

これらは体の部位や季節、性別や年齢、環境などによって割合は微妙に変わってくるのでしょうが、成分自体の違いはあまりないと考えています。

特に髪は、皮脂は毛穴より直接運ばれる皮脂です。なので皮膚表面上で表皮皮脂と混ざる皮脂とは若干の違いがある可能性も考えられます。

ですが、毛穴の内部でも内毛根さやなどの角質がはがれますので、そこから表皮脂質と同じ細胞間脂質などが出ている可能性があります。

しかも皮脂中にしめる表皮脂質の割合が10%以下と低いということも考えると、皮膚上の皮脂と髪を被っている皮脂は、わずかな差はあるかもしれませんが成分的にはさほど差はないと考えられます。

ここから、皮脂の各成分について簡単ではありますが解説したいと思います。

トリグリセリド

いわゆる中性脂肪(または中性脂質)またはTGTriglycerideの略)とも言われるもので、多く食品に油脂としてふくまれています。なので、油脂と言えばだいたいは、このトリグリセリドのことを指します。

ちなみに中性脂肪とは、アルカリ性でも酸性でもない中性をしめすため、中性脂肪と言われます。

3つの脂肪酸2がグリセリン3という成分にくっついたもので、グリセリンは近年の学術的にはグリセロールと言われ、トリグリセリドをトリアシルグリセロール(TAG。Tracylglycerolの略)と言う事もあります。

トリグリセリドこと中性脂肪は、消費せずにあまったエネルギーを足りないときに使えるように、貯蔵できるように体内で合成されたもので、皮脂の油脂もこれらを使って作られていると考えられます。

細胞のエネルギーとなるように皮膚上に存在する常在菌のエサとなる成分です。トリグリセリドは皮脂腺から分泌された直後から常在菌によって分解され、一部はジグリセリドやモノグリセリド、そして遊離脂肪酸に分解されます。

ジグリセリド・モノグリセリド

トリグリセリドが分解され、脂肪酸が1つ取れ、2つになったものをジグリセリド。それからさらに1つ取れ、脂肪酸が1つだけのものがモノグリセリドです。またの名をジアシルグリセロール・モノアシルグリセロールと言います。

主に乳化剤として代表的な成分で、皮脂を乳液化させ、流動性を高め、汗や水と混ざりやすくしてくれます。

遊離脂肪酸

トリグリセリドなどと結合していない脂肪酸を、遊離脂肪酸と言います。

遊離脂肪酸は皮脂分泌直後には皮脂中には存在せず、常在菌によってトリグリセリドなどから分解されて作られます。

皮脂中にある遊離脂肪酸にはオレイン酸やパルミトレイン酸など数多くの種類があり、この脂肪酸は弱酸性をしめすため、その影響で皮脂は弱酸性なりますに。

ワックスエステル

いわゆる蝋(ロウ)のことで、蝋を化学的に言えばこの名称です。

ロウと言えばロウソクのように常温では固形のものを連想しやすいですが、ホホバオイルのように液状のワックスエステルもあります。

ワックスエステルは構造的に常在菌で分解できません。また皮脂のワックスエステルにはサピエン酸という人間に特有な脂肪酸4が結合しています。

スクアレン

皮膚や肝臓で作られる油性物質で、コレステロールを生合成するのに必要な成分です。

ちなみに似たような名前でスクアランがありますが、こちらはスクアレンに水素をくっつけたもので、化粧品の潤滑油などで使われています。

コレステロール・コレステロールエステル

コレステロールは人間のあらゆる細胞の生体膜(細胞膜)で見いだせる脂質で、私たちの体に必要なものです。

そのコレステロールに脂肪酸がくっついたものがコレステロールエステルです。

皮脂には、皮脂を分泌するときに破壊する脂質細胞の細胞膜や、新陳代謝ではがれる細胞の残骸や細胞間脂質などがふくまれる表皮脂質から皮脂の中に混ざります。

その他の成分

これらの成分以外に皮脂には、微量の成分が数多くふくまれています。これらは以下のような成分があると考えられます。

  • ミネラルや有機物といった汗の残留物質
  • 細胞破壊や細胞間脂質などから出るセラミドなどの脂質や成分
  • 有害物質や重金属など、体に不必要なもの
  • その他、脂溶性のものなど

これらは含まれているかどうかも分かりにくく、中には推測の部分もあります。

ですが、皮脂の成分には前記のトリグリセリドなどといった成分以外に、その他の成分としてさまざまなものが入っていることは確かです。

まとめ

皮脂はこれらからできていて、そしてここに汗の水分などが混ざることで、皮脂膜になります。

今回のお話で分かるように、実はトリグリセリドとそれに関す成分であるジグリセリドやモノグリセリド、そして遊離脂肪酸を除いた成分以外は、その成分が油脂の性質があるということしか分かっていません。

髪の毛どころか皮膚に対しても、皮脂どのような働きがあるのか、よく分からない部分が多いのです。例えば、サピエン酸はニキビやアトピー性皮膚炎と深い関わりがあると言われていますが、はっきりしたことは未だ解明されていません。

これから研究が進むと、髪と皮脂との関係や役割が、もっと詳しく分かるかもしれません。

※引用・参考URL
皮脂腺・皮脂・表皮脂質・皮表膜 - ドクターズオーガニック

  1. ちななみに皮脂腺は、手のひらと足の裏には毛穴がないため、ありません。ただし口唇(くちびる)など、毛が生えない一部の部位には皮脂腺だけが存在している場所もあり、このような皮脂腺を独立皮脂腺といいます。 ↩︎

  2. 脂肪酸とは油脂の構成成分で、細胞のエネルギーとなる成分。油脂はこの脂肪酸の種類によって液状の油であったり固体の脂であったりと性質が変わります。 ↩︎

  3. グリセリンは甘味料や保湿材などで使われる成分ですが、生体内では脂肪酸などと結合して中性脂肪などになる働きも持っています。 ↩︎

  4. サピエン酸の名称は、人間を表す「ホモ・サピエンス」が名前の由来。 ↩︎