日本は湿度が高い国だと言われていますが、特に梅雨から秋雨までの期間は、全国の平均から見ても湿度は高くなっています。

湿度が高いと困るのが髪のセットやくせ毛ですよね。髪が空気中の湿気(水蒸気)を吸収して、セットがくずれたり、くせ毛で髪がうねったりしてしまいがちです。

時季によっては困った髪の毛の吸水性ですが、なぜそのような機能があるのでしょうか?

この理由のひとつは、毛髪自体が髪の水分を一定量保存するよう調整する仕組みを備えているためです。つまり、髪の毛が乾燥しすぎないように水分を吸収し、毛髪中の水分量を調整しているのです。

今回は髪が持っている水分についてのお話です。

髪の毛は一定の水分を保持する

髪の毛は柔軟で、ほどよい弾力があり、しなやかに動いたり曲がったりしますが、その理由の一つに「内部に水分を保持している」というものがあります。

例えば、パスタやそうめんは、ゆでる前の乾燥した状態では固くバキバキ折れますが、ゆでるて水分をふくむと柔らかくなり、ゆでる前のように簡単に折れたりしません。

髪の毛も同じで、水分を内部に保持していますので、柔らかくしなやかに動けます。水分が全てなくなればタイヘンで、髪の毛は200℃より高い高温になると、全ての水分が分離していくので、髪の毛はバラバラ(つまり炭化=こげる)になります。

このように髪の毛にとって保持している水分は、大事な要素です。髪の毛がダメージを受けてパサパサになるのは、髪の毛が本来持っている水分が失われているのも原因の一つです。

髪の毛が持てる3つの水

このように髪の毛と水分は密接な関係があり、髪の毛は内部に水分を抱え込む能力があるのですが、この内部にふくむことができる水分は、髪の毛との関係の違いから「吸着水」「自由水」「結合水」の3つに分けられます。

くっついているだけの『吸着水』

シャワーなど水で髪をぬらせば髪は湿り、水分を吸収しますよね。

このように、ぬれた状態のときに髪が吸収する水分を、専門的には吸着水といいます。

髪の毛に吸収されたこの水分は、髪の毛の組織にくっついているだけなので、ドライヤーなどで乾かせば簡単に髪の毛から離れていきます。

ちなみに吸収する水分量は、ダメージの少ない健康毛で、髪の毛の重量の約18%ほど吸収すると言われています。

自由に出入りする『自由水』

髪の毛はどんなに乾燥させても、ある程度の水分を持ちます。

髪の毛が健康毛の状態なら、だいたい髪の重量の約5~12%程度の割合の水分を保持しています。

この保持している水分の内、約7%程度は空気中の湿度によって変化する水分です。

というのも、髪の毛は空気中の水分を出し入れして調整することで、髪の毛全体での約7%ほどの水分量を維持するように出来ています。

このように空気中の水分(湿度)の影響を受け、自由に出入りする水分を、自由水と言います。

湿度が高いと、この自由水が保持するいっぱいまで水分を吸収します。これが湿度が高い日にセットの持ちが悪くなったり、クセが強くなったりする原因です。

この自由水という名称は、文字通り髪の毛内で何とも結合しておらず、自由に動け、自由に出入りできることから来ています。

この自由水は、ドライヤーの熱や冬場やエアコンなどの空気の乾燥によって、簡単に減ります。

簡単には離れない『結合水』

さきほどの吸着水と自由水は、比較的かんたんに毛髪内から出て行くのですが、それ以外になかなか離れない水分が髪の毛にはあります。

このような水分は髪の毛全体で5%ほどあり、髪の毛の内部の組織に強力に結合しており、そう簡単には離れません。

この髪の毛の内部で強く結合している水分を、結合水と言います。

この水分を分離しようとすると、前述のとおり200℃以上の高い熱で熱しないと離れません。離れた髪は炭化し、バラバラに崩れます。

また、凍るような温度(氷点)にも強く、0℃ぐらいでも凍らないという特徴もあります。

このように強い結合で結びついている水分なので、通常ではなくなることがほぼありませんが、髪の毛のダメージなどが原因で減る場合があります。

つまり、髪の毛がダメージを受けると減る水分です。

この結合水にも3つの種類があり、「タンパク質結合水」「CMC保持水」「NMF保持水」の3つが髪の結合水と呼ばれるものです。

タンパク質結合水

髪の毛は、ケラチンなどのタンパク質が約75%から80%ほどと大部分を占めているのですが。

これらタンパク質は、水の分子と強い相互作用などを利用して結合しています。

このようにタンパク質の結合に関係している水分のことを、タンパク質結合水と言います。

CMC保持水

CMC(細胞膜複合体)とは簡単に言えばキューティクルとキューティクルの間や、コルテックスとコルテックスの間、そしてキューティクルとコルテックスの間にある組織のことです。

髪の毛の細胞同士をくっつける接着剤のような役割をしたり、髪の隅々まで水分を行き渡らせせる水の通り道になったりと、さまざまな働きを持っている組織です。

このCMCは「水分の保持」という働きも持っており、このCMCが保持している水分をCMC保持水と言います。

NMF保持水

NMF(天然保湿因子)とは、髪のコルテックスの内にある間充物質にふくまれている物質です。

アミノ酸などさまざまな成分をまとめてNMFと一括りにしているのですが、これら成分は水の分子と非常になじみやすい性質を持ちます。

つまり、コルテックス内に程度な水分を保持する働きがあるということです。このNMFが保持している水分をNMF保持水と言います。

美しい髪には、水分が必要

このように髪の毛は、ある程度の水分を保持する能力があります。0℃から200℃ぐらいまでの環境の変化でも髪の性質(弾力性やしなやかさ)がそう簡単には失われないのは、このように水分を保持できるところが大きいのです。

ちなみに、髪が持つことができる水分量は、個人差はとうぜんありますが、だいたいは同じで、髪の毛の重量の約30%程度の量を吸収します。つまり、結合水、自由水、吸着水、合わせて約30%程度の水分量を持つことができます。

この量は、ダメージ毛でも同じです。つまり、健康毛でも、ダメージ毛でも、水分を保持する総量は同じ、約30%程度なのです。

ですが、健康毛とダメージ毛では自由水と結合水の量が違います。ヘアダメージがひどい髪は、この自由水と結合水の量が減っているのです。

ダメージ毛では、その失った自由水と結合水の代わりに、吸着水が吸収されます。ダメージで失った髪の組織のスキマに、水が入り込むイメージです。

つまり、ダメージ毛では吸着水の量が多いのです。

だから、ダメージを受けた髪の毛は乾きにくくなり、乾いた状態では自然に保持する水分量が少ないため、バサバサと乾燥した髪の毛になるのです。

この自然に確保している水分は、髪の組織とキューティクルによって保持しています。

特にキューティクルはもっとも外側が疎水性で、毛髪中の水分や、髪の毛の保水成分が簡単に出ていかないよう働いています。

しかもキューティクルは閉じ込めるだけでなく、髪の水分量や大気中の湿度によっても開閉し、髪の水分量を一定に保つように機能しているのです。

つまり、髪は呼吸し、水分量を調整しているのです。

太古の遺跡から出たミイラなどで、髪の毛が腐らずに残っていたりするのは、この髪の水分調整がうまく機能しているからだと言われています。

髪の毛って、ほんとうによく出来ていて、不思議ですよね。