髪は「死んだ細胞」と呼ばれています。
死んだ細胞とは、細胞分裂などの活動をしていない細胞をいいます。髪の毛は細胞核もミトコンドリアもなくなり、細胞としての活動はしませんので「死んだ細胞」と言われるのです。
そんな髪ですが、実は呼吸していると聞いたら、どうですか? びっくりしますか?
今回はそんな、髪の呼吸についての話です。
人の髪と、羊の毛
ちょっと話がずれますが羊の毛、つまり羊毛(ウール)がありますよね。
羊毛と聞いて連想するのは何でしょう? やはり手編みのセーターじゃないでしょうか。
暖かくて寒い時期にピッタリな羊毛のセーター。じつはこのセーターを着ていると肌がベタつかないというのをご存じですか?
羊毛のセーターは水を弾く性質を持ちながら湿気(水蒸気)は吸収する、という性質を持っています。
この性質で水滴は弾いて外部に流し、皮膚表面の湿気は羊毛が吸着するので、肌は汗や湿気でベタ付かず、サラサラした状態になるのです。
髪と羊毛は、構造がよく似ています。なので、髪の毛も羊毛とおなじような機能があると考えられます。
髪はキューティクルで呼吸する
髪は通常、外側がキューティクルで包まれています。
そのキューティクルの外側は通常水を弾く機能があり、また何層にもうろこ状に重なっていて、こうすることで毛髪内部に水分を閉じ込め、乾燥しにくくさせています。
ですが、必要以上に水分が多くなると、このキューティクルの重なりは広がり、水分を外に出すように機能するのです。
つまり髪の毛は、内側に水を閉じ込めながら、その量を調整する機能を持っているのです。
このような機能がついているということは、髪には適切な水分が必要なのです。水分があるからこそ、あの弾力や柔軟性があるのです。
まとめ
髪の毛にこのような機能があるのかは分かりません。おそらくはるか昔、人間の祖先が必要とした機能なのでしょう。
この機能以外にも断熱やクッション感覚器官などの機能がありますが、それらを得るために「親水性の中身を、疎水性の外皮で包んだ」ものになっていると考えられます。
この水分を保持する機能によって、髪の毛は人体組織の中でも丈夫な部類に入ります。例えば太古のミイラに髪が腐らず残っているように腐敗しにくく、水分をふくんでいるのに氷点(0℃)であっても凍りませんし、高温も200℃ぐらいまで耐えます。
この髪の毛の水分がなくなるとどうなるかというと、弾力や柔軟性はなくなり、パサパサのバサバサになって、固く折れやすくなります。つまりはダメージを受けやすい、ようは壊れやすくなります。
このように、髪は「死んでいる細胞」なのに、自身で毛髪内部の水分量を一定量に保つ機能を持っているのです。非常に精巧で、不思議な仕組みですね。
逆に言えば、この呼吸を邪魔するものがあると毛髪内部の水分量が崩れていきます。必要以上の被膜成分が髪に悪い影響を与えるのも、この呼吸の妨害が原因の一つだと言われています。