髪を切らずに長く長く伸ばしていくと、ある程度の長さになったら伸びにくくなります。

これは髪の毛の一本一本が途中で切れたり自然に抜けたりするためで、理論上では髪は、ある程度の長さ以上は伸びないとされています。

では、抜けた髪はもう生えてこないのでしょうか?

いいえ、そんな事はありません。抜けた髪の下からは、新しい髪の毛が再び生えているのです。

これがいわゆる「ヘアサイクル」です。

ヘアサイクルは毛周期とも言われ、うぶ毛であれ、まつ毛であれ、人体に生えている毛髪すべてが持っているサイクルです。

私たち人間の体が新陳代謝によって、古い細胞が新しい細胞に次々と入れ替わっているように、髪や毛にも「古い毛髪が抜けて、新しい毛髪が生えてくる」という入れ替わりのサイクルを持っています。その様子から「髪の寿命」「髪の毛の一生」などとも言われています。

ヘアサイクルはその状態の違いにより「成長期」「退行期」「休止期」の三つに分けられ、休止期の後には成長期に戻るというサイクルを繰り返しています。

髪が成長する期間『成長期』

ヘアサイクルのほとんどの期間は、髪が伸びる期間である成長期です。活動期と呼ぶこともあります。

この期間では毛母細胞が活発に動いて髪をどんどん作っていき、その割合は通常の状態で、全頭毛の85~90%ほどです。

この期間は2年から6年ほど続き、長い人では7年ほどあると言われています。基本的に男性は期間は短く、女性は期間が長い傾向があります。

成長期をさらに細かく見れば、その状態から3段階に分けられます。

成長したての段階「早期」

成長し始めたばかりの状態で、前期などと呼ばれることもあります。

髪はまだ毛髪として呼べないほど細く短い状態か、まだ皮膚内にある状態です(毛髪が皮膚内にあるときも初期などとして分けることもあります)。

毛球もまだ小さく、毛包も皮膚から見て浅い状態です。

そこそこ成長した段階「中期」

毛髪がある程度成長した状態です。

基本的には毛髪と呼べるほど成長していますが、まだ細くて短く、成長途中の段階と見なせる状態です。

ただし、皮膚から下の毛根部分はしっかり成長していて、毛球はある程度しっかり大きく、毛包もある程度深くに下がってきています。

立派に成長した段階「後期」

毛髪として完全に成長した状態です。

皮膚表面から出ている毛髪も太く長く、しっかり成長しています。

皮膚の下の毛球も立派に成長し、毛包は真皮の下にある皮下組織に達するほど深く成長しています。

休む準備期間『退行期』

そのうち毛髪の成長が弱まり始めます。つまり、抜ける準備に入ります。

その時期を退行期、または移行期と言います。メデュラ(毛髄質)がある毛髪なら、毛髄細胞の生成が止まるのが、この段階に入った初めのサインです。

この段階では毛乳頭が縮まり始め、毛母細胞の活動が減っていきます。

毛母細胞および毛球全体の細胞の角化が始まり、色素の生成も停止していきます。

毛根さやも小さくなっていき、それにともない毛球や毛包も縮みはじめ、深かった毛包自体が浅くなりはじめ、皮膚表面へと上がってきます。

この時期は20日前後(2~3週間)で、全毛髪中で退行期がしめる割合は約1%ほどです。

新しい髪への準備段階『休止期』

抜ける準備が整えば毛髪は完全に活動を停止する休止期へと移ります。

毛母細胞と色素細胞の活動は完全に止まり、毛乳頭もか小さく縮み、毛球から完全に離れます。

その毛球の位置も、毛隆起の下部近くまで上がります。つまり、毛包が伸縮するのは毛隆起から下の部分だけで、そのため毛隆起から上の部分を固定部、下の部分を変動部などと呼んだりします。

毛球自体は小さくなり、完全に角化し、形が棍棒こんぼう状になります。このように棍棒状になった毛根を棍毛(こんもう)と言います。

同時に、この下の毛乳頭の部分では、次の新しい髪の毛が生える準備が進んでいます。

そして、その新しい髪が成長し始めると、それと同時に以前の髪は簡単に抜けるようになります。ブラッシングやシャンプー、または新しい髪が押し出すような感じで自然と抜け落ちます。

この段階は2~3ヵ月から数ヵ月ほど続き、長い人では9ヵ月ほどあるとも言われています。休止期の毛髪が頭髪全体をしめる割合は10~20%ほどです。

なお、毛髪が停止期になっても皮脂腺は停止せず、いつもと変わらず皮脂を分泌し続けます。

まとめ

このへサイクルを頭髪の平均本数の10万本で純に計算すると、その約1割、つまり約1万本ほどが抜けることになります。

ですが、これらが一気に抜けるということはありません。ヘアサイクルは毛髪一本一本ごとに独自のサイクルを持っており、抜ける時期はバラバラになっているからです。

またへサイクルは、数年単位のヘアサイクルを、同じように繰り返すわけではなく、年齢や環境などによっても変化していきます。

年老いていくと眉毛が長くなったり頭髪が細くなったりするのは、このヘアサイクルが変化することが原因の一つです。

実例として分かりやすいのは、女性の妊娠・出産です。

出産後には髪の毛が大量に抜けるのですが、その原因は妊娠中にヘアサイクルが長くなるためで、本来は休止期で抜けているはずの髪が抜けていないからです。

これが出産後もとに戻れば、抜ける予定だった髪の毛も元に戻って抜けるので、抜ける髪の毛が増えるのです。

他には過度なダイエットやストレス、食生活や環境などでもヘアサイクルに影響を与えると言われています。

他にヘアサイクルは個人差も大きく、ヘアサイクルを単純に計算したら、髪の毛は長くても約1メートルぐらい(1年に伸びる髪の長さ約15センチ × ヘアサイクル7年 = 105センチ)しか伸びないのですが、人によってそれ以上伸びた記録が多く報告されています。

このようにヘアサイクルといっても例外なども多く、その全てが解明されているとは思えません。分かっているのは「どうやら周期的に生え変わる」ということです。

これからの研究によっては、新たな事実が新発見があるかもしれません。楽しみですね。