ずいぶん昔に流行した商品に「リンスインシャンプー」があります。

当時の1980年代後半ごろは、朝にシャンプーする「朝シャン」が大流行。その朝という忙しい時間にシャンプーとリンスが同時にできるリンスインシャンプーは、テレビCMの影響もあって大流行したのです。

このようにシャンプーとリンスが同時にできる画期的なシャンプーだったのですが、「髪が傷む」や「仕上がりが悪い」などの理由で、あまり見かけなくなりました。

現在でも販売はされていて、幼児用のシャンプーなどにもあります。なるほど、子供のシャンプーはたいへんですものね。一回でシャンプーもリンスもできるリンスインシャンプーは便利です。

このリンスインシャンプーですが、単純にシャンプーとリンス(またはコンディショナー)を混ぜても、できるものではありません。

試していただけたら分かりますが、シャンプーとリンスを混ぜると、シャンプーの効果とリンスの効果のどちらもなくなるか、非常に弱くなります。つまり混ぜてもリンスインシャンプーにはならないのです。

いったいリンスインシャンプーとは何でしょうか? 今回はそんなリンスインシャンプーのお話です。

リンスインシャンプーの仕組み

従来のシャンプーとリンス(コンディショナー)を混ぜてもリンスインシャンプーにはなりません。ではどうしているのか?

実は、このリンスインシャンプーの中には、シャンプーといっしょにシャンプー(洗浄成分)の邪魔をしないリンスの成分がふくまれているのです。

従来のリンスやコンディショナーには、質感調整や静電気抑制の目的で、カチオン(陽イオン)界面活性剤という成分が使われています。

それに対してシャンプーの洗浄成分はアニオン(陰イオン)界面活性剤。このカチオンとアニオンはくっつきやすく、シャンプーとリンスを混ぜたたらどちらの効果も弱くなるのは、このためです。

そこでリンスインシャンプーには、高分子のカチオン界面活性剤、つまり「大きなリンス成分」を使っています。

シャンプーとして使う前、つまり水で薄める前のリンスインシャンプーは、高分子のカチオン界面活性剤(リンス成分)の周りに、低分子のアニオン界面活性剤(洗浄成分)がくっついているイメージです。つまり大きなリンス成分に、小さな洗浄成分がいっぱいくっついてるのです。

この状態でシャンプーとして使用すると、小さな洗浄成分は、その小ささから先に水に溶け、リンス成分から離れます。

離れた洗浄成分は洗浄剤、シャンプーとして働き、汚れにくっつき、落とします。

そして洗い終わり、すすぐとき、まず離れた洗浄成分と汚れは、大きいリンス成分より小さいので、水で先に流れてしまいます。

そうすると髪には大きなリンス成分が残ります。これがリンスとして働くのです。

これがリンスインシャンプーのおおまかな仕組みです。

もっと詳しいことは、こちらのサイトで書かれています。当サイトも参考にさせていただきました。

参考リンク:
放課後化学講義室 リンスインシャンプーの化学
シャンプー&リンスの化学 - 化粧品の化学 - Cute.Guides at 九州大学 Kyushu Universit

リンスインシャンプーの欠点

これを見た感じでは、洗浄したあとにリンス成分が効果を発揮しますので、うまくいきそうな感じがします。

ですが、実際に使ってみると、いろいろ問題があったのです。大きな問題として次の2点があります。

洗浄力が弱い

シャンプー成分にリンス成分を入れてますので、洗浄力がどうしても弱くなります。

弱いと汚れが落ちにくいだけでなく、次にあげる問題にも関係してきます。

仕上がりが悪い

これが致命的だったと思います。当時のリンスインシャンプーは、洗った後の髪の仕上がりが、良くなかったのです。

この原因はリンス成分にあります。リンスインシャンプーですすぎの時にリンスの効果を発揮する仕組みは「コアセルベーション」と呼ばれる仕組みです。この仕組を理解するのには、花王のこれらのサイトに分かりやすく書いています。

参考リンク:
シャンプー|製品知識/お手入れの歴史|花王株式会社 ヘアケアサイト
花王の表面補修技術|製品知識/お手入れの歴史|花王株式会社 ヘアケアサイト

これがうまく働けばよかったのですが、じっさいはそううまく働かなかったのです。

特にこのリンス成分が髪の毛にべっとりくっつくと、髪がキシみ、手触りが悪くなるのです。

ここで洗浄力の弱さも関係してきます。つまりリンスインシャンプーの洗浄力では、この成分がしっかり落ちないのです。これにより高分子のリンス成分が髪に残り続け、より厚くなり、ますます仕上がりが悪くなります。

それは、使った人によっては「髪が傷んだ」と思うほどだったのです。

現在のリンスインシャンプーと、使うコツ

このような欠点の影響で、流行したリンスインシャンプーも徐々に使う人が減っていきました。

そしてこの後、ソバージュやヘアカラーの流行といった時代がやってきます。髪が大きくダメージを受けるこれらの流行で、ますますリンスインシャンプーの出番は減っていきます。

ですが、リンスインシャンプーがなくなった分けではありません。やはり「リンスをしなくていい」というメリットは大きく、今でもリンスインシャンプーは販売されています。

しかも、昔にくらべてシャンプーなどの品質が向上したように、リンスインシャンプーの品質も良くなっています。

また、最初に話したように子供用のリンスインシャンプーもあります。子供向けにキャラクターを使ったデザインの容器です。