髪の毛の科学では、髪がアルカリ性の状態は化学反応がおきやすい状態。例えば、パーマで使うチオグリコール酸はアルカリ性の水溶液中だと、その効果を非常に高め、中性や酸性では反応は低くなります。

なのでアルカリの残留、いわゆる「アルカリ残留」や「残留アルカリ」がある髪の毛は、思いもよらない化学反応を引きおこし、パーマやヘアカラーで予想外の結果が表れる可能性も、否定できません。

そもそも髪の毛には、まだ分かっていないことが非常に多いのです。残留したアルカリのことも、じつはよく分かっていません。

分かってないとはいえ、結果的に髪の毛は、弱酸性に戻したほうが髪にとっても理美容師さんにとっても良いので、弱酸性がいいと言われます。

弱酸性に戻すのにはアシッド剤やアルカリ除去剤などを使うのが1番手っ取り早いのですが、それらが手元にない場合もあります。また残留したアルカリが強ければ、一回使った程度では弱酸性にならないこともあります。

髪の毛にはアルカリが残留している間は、髪がダメージを受けやすい状態。では、その期間はどうすればよいか?多少のダメージはあきらめるしかないのでしょうか?

そうでもありません。実はちょっと気をつけるだけでも、残留アルカリで受けるかもしれないダメージを、かなり軽減できると思っています。

薬剤以外での残留アルカリの対処法

残留アルカリと、還元剤や酸化剤などが残留していると仮定して、その状態でダメージを受けるとすれば、次のようなことをすればダメージを受ける可能性が高いと考えられます。

  • ぬれたままで長時間放置する
  • ぬれた状態で高い熱を与える

つまり、これらを意識して避けるようにすれば、ダメージを受ける可能性がグンと下がるのです。

ぬれたままで長時間放置

古代ローマ時代や中世ルネサンス期のヴェネツィアの女性は、アルカリ剤を塗布した髪を太陽光に長時間あてて脱色していたそうです。だけどこの方法は髪への負担が大きく、髪をかなり傷めていたそうです。

また中華料理のピータンは、卵をアルカリ性の粘土で包み、長期間冷暗所で保存することでタンパク質を変性させた食べ物です。

パーマやヘアカラーなど髪に関係した化学反応では、基本水がないと反応しません。乾燥した状態では自然には反応しない(またはしにくい、してもわずか)というのが現在の毛髪科学です。

そして、その状態で長時間おいておくことで、先ほど話した昔の脱色法やピータンのように、見て分かるほどの化学変化がおこります。

つまり、「ぬれたまま」で「長時間放置」という状態だと、髪の毛がダメージを受ける可能性が高まるということです。

とはいえ、ダメージが感じられるほどの化学変化が生じるには、かなりの長時間が必要だ思われます。海水浴やプールといった長い時間、ずっと髪がぬれたままの状態でない限り、ダメージにはならないと思います(軽度は受けている可能性はありますが)。

これら「ぬれている」「長時間」のうちどちらか、あるいは両方なくなればダメージは軽減されます。つまり、髪がぬれた状態を極力避け、ぬれたら髪を早く乾燥させるようにすると、ダメージを減せるということです。

ちなみに現在の毛髪科学では、残留アルカリや還元剤が空気の酸素によって酸化するという化学変化、いわゆる「空気酸化」はおこらないというのが通説です。空気が毛髪内部まで入る可能性がないからです。

なので、残留アルカリは洗わず何もしなくても自然となくなる、なんてことはおそらくありません。あったとしても、シャワーなど水で洗い流したほうが、早く除去できると思います。

なので「何が何でもぬらしたらいけない」という訳ではありません。シャワーをする程度の時間程度なら、ぬれても大したダメージにはならないと思いますし、それよりはシャワーの水で早く洗い流して出してしまったほうが、髪の毛にとっては良いと思われます。

ぬれた状態での高熱

髪の毛に関係した化学反応には水が必要ですが、その反応の強さに関係してくるのが薬剤のスペックと塗布量と時間、そして「熱(温度)」です。

熱(温度)は高温であるほど化学反応の力は強まり、低いと逆に弱くなるとされています。

例えば、世界最初のパーマネントウエーブはアルカリ剤を髪に付け、加温してパーマをあてていたそうです。つまりアルカリと熱だけでも髪の毛は化学反応をおこし、パーマがかかるのです。

ですが、アルカリと熱で化学変化(加水分解)がおきるには(アルカリの量や度、pHの高さなどにもよりますが)、ぬれている状態で50℃以上の温度が必要です。

還元剤が残留していたら50℃より低い温度でも化学反応がおきる場合があるますが、こちらも基本大丈夫。反応をおこすには高めのアルカリ性(pH 9 以上)が必要という話なので、現実的にこれほどの高いアルカリと還元剤が残留する可能性は低いと思われます。

ただ一点だけ、この50℃を軽く超える可能性があります。それがドライヤーセットアイロンといった道具です。

ドライヤーは使い方次第で髪を100℃を超える温度にまで熱することが可能です。髪の毛がぬれた状態で、これほどの温度まで温度が上がると、残留アルカリがなくても髪の毛にダメージが生じます。ぬれた状態でセットアイロンを使うなどは普通でもダメージになりますので論外です。

先ほど話したように残留アルカリや残留した還元剤があると、100℃以下の温度でも化学反応がおこりかねません。なので残留アルカリがあると思われる状態で、このような道具を使う場合はぬれている時は低めの温度にしたほうが、安全です。

これだと「だったらそのまま、自然乾燥がよい」と思ってしまいます。もちろんそれも悪くはないでしょう。

ですが、残留アルカリがある場合、ぬれた状態より早く乾いた状態にしてあげたほうが髪の毛がダメージを受ける確立は減ります。また自然乾燥は髪のダメージに以外の問題(頭皮のニオイや雑菌など)も気になります。やはりドライヤーで早く乾燥させたほうがよいでしょう。

ドライヤーを使うとき、熱風を1ヵ所に長い時間あて続けると髪の毛の温度は上がっていきます。理美容師さんみたいにドライヤーをふりふり振りながら熱風をあてると、髪の温度があがりすぎる危険性を減らせます。

また冷風でもよいでしょう。ですが、冷風のままだと、どうししても乾かすのに時間がかかってしまいます。適度な温風のほうが効率的だとは思います。

ある程度乾けば温度を上げても良いですし、8~9割程度までいけば、通常と同じ温度でも大丈夫だと思います。

それでも念のため、残留アルカリがあると思われる場合は、いつもより低い温度でドライヤーやアイロンを行ったほうが良いかもしれません。

まとめ

ちなみに「ぬれた状態で長時間、直射日光が当たる」というのもダメージを受けますが、このような状態は海水浴などのマリンスポーツや、室外のプールといった場面以外では、そうそうその状況を考えられません。

それでも、残留アルカリがある場合、髪の毛が乾燥していても、一日中の外で強い直射日光をあび続けるという状態は、できれば避けたほうが良いかもしれません。残留アルカリがなくてもダメージを受けそうですが。

このように、「髪をぬれたままにせず、すぐ乾かす」のと「ぬれている時に、髪を熱くしない」という2点を押さえれば、残留アルカリからのダメージはかなり軽減できると思います

これらはほんとちょっとしたことですが、気にかけるだけで大分変わってくとは思います。